ゴルフの練習なり、ラウンドなりをしていて、「あー、こうやって打てばいいのか!」と誰しも目からうろこが落ちるように、スィングのコツを掴んだことがあると思います。でも一晩寝てしまうと、ほぼ100%「昨日あれほど素晴らしい球を打って、スウィングのコツを掴んだ自分はどこへ行ってしまったのか?」という結果になります。何故、掴みは持続しないのか?「掴んでは離す」を繰り返して四十数年、掴みのエキスパートの私がその原因を考察すると、次の三つの原因が考えられます。
まず、一番多いのが、オーバードゥ(overdo)、つまり「やり過ぎ」です。例えば、コックを解かないイメージでインパクトを迎えると素晴らしい球が出たとします。その時点ではこの感覚を身体で掴んでいるのですが、その掴んだ感覚を再現したいので、この感覚を言葉に置き換えて覚えます。つまり、「コックしたまま、インパクト」という言葉でこの感覚を覚えようとするのですが、悲しいかな一晩寝てしまうと、大概の人は、昨日掴んだ感覚を身体は覚えてくれていないので、「コックしたままインパクト」という言葉に置き換えた動きを再現しようとする訳です。ところがそうすると、大抵の場合オーバードゥになってしまいます。と言うのは、「コックしたまま」と言っても実際のスウィングでは自然とある程度コックは解けているのですが、「コックをしたまま」を文字通り再現しようとする為、やり過ぎて全くコックを解かずにインパクトしてしまう訳です。そうすると当然、インパクトでヘッドが戻って来ないので、昨日打った素晴らしい球が再現出来ないのはもとより、シャンクは出るわ、トップは出るわで、「昨日掴んだのはなんだったんだ?」という結果になります。
二つ目の原因はズバリ、こう言ってしまうと身も蓋もありませんが、単に「運動神経が悪い」という事です。運動神経が良い人っていうのは、何が優れているかというと、掴んだ身体の動きを、身体に短時間で覚えこませる事が秀でているのだと思います。彼らは掴んだ感覚を短時間で身体に覚えこませる事が出来るので、一晩寝ても、その動きを身体が覚えていてくれていて、翌日も同じ動きを再現できるのです。一方、私の様に運動神経が悪い人間は同じ動作を何度も何度も繰り返し行って、やっと身体に覚えこませる事が出来る訳なので、前の日の1時間程度の練習で掴んだ身体の動きを翌日再現するなんて言うのはほぼ不可能な事なのです。
3つ目の原因は、素晴らしい球を打てた要因が、実は他にも有ったのではないかと言う事です。「コックしたままインパクト」のイメージで素晴らしい球が出たのは、実は無意識のうちに「下半身が先行して切り返しが出来ていた」などの他の動きと上手くかみ合っていたからこそ、素晴らしい球を打つことができたのかもしれません。しかし、自分で掴んだと思って言葉で覚えているのは「コックしたままインパクト」だけで、下半身の動きは無意識でやっていたため、翌日、コックだけ再現しても同じ当たりは再現できないという次第です。この様に、掴んだ事を再現するって言う事は普通の人間には非常に難しい事なので、凡人は「掴んでは離す」を繰り返すのです。
でも、今回の私は、「本当に掴んだ」ような気がします。と言うのは、掴んだのが身体の一部分のメカニカルな動きに関するものではなく、「心の持ちよう」だからです。
私は、クラブ評論家のマーク金井氏のオルタナゴルフというYoutubeチャンネルが好きで良く見ています。オルタナゴルフのオルタナとはalternative(代替、代案)の事だそうで、このチャンネルでは「新たな提案」という使い方をされています。そもそもプロとアマチュアでは同じゴルフと言ってもフィジカルな能力も違えば目指ものも違うので、スウィングはもとより、コースマネジメントなど、我々アマチュアはプロが取っている「本格的な方法」とは違う「代替的な方法」が合って然るべきではないか、という事です。
そのオルタナゴルフのコンテンツの一つに「素人のゴルフ」と言うのがありますが、素人のゴルフの「スコアメーク編」で、マーク金井さんは「セカンドで170ヤードを確保しろ」と言っています。その理由は、このYoutube (152)確実に170ヤード打てる重要性【素人のゴルフ】 - YouTube で詳しく説明されているので、実際にこのビデオを見ていただきたいのですが、要するに、2打目で確実に170ヤード打てるクラブを作れ、と言う事です。「確実に170ヤード以上」と言うのは、一見簡単そうですが、実は素人にはなかなか高いハードルです。
ピンまで170ヤードなら私は普通は22度のユティリティーを持ちます。これだと、まあまあ良い当たりでキャリーも含めて170ヤード、稀にバカッ飛びして180ヤード位飛びますが、少しでもあたりが悪いと160ヤードも飛びません。と言う事は、22度のユティリティーは私にとって「確実に170ヤード以上」飛ばせるクラブではないわけです。
22度のユティリティーの上のクラブは7番ウッドですが、これはナイスショットで180ヤード位のクラブなので、これも、すこし当たりが悪いと170ヤードは飛びません。次に大きいクラブは17度の4番ウッドですが、4番ウッドはさらにナイスショットの確率が低いので「確実に170ヤード以上」飛ばすのは無理なのではないかと思いました。しかし4番ウッドもダメとなると、他に候補のクラブがありません。我々素人が確実に170以上打つって言うのは、本当に非常に難しい事なのです。
結局、私が出した結論は、ナイスショットで200ヤード位飛ぶクラブ(つまり私にとっては4番ウッド)をミート率重視で軽く振って170ヤード以上飛ばす」という事です。早速その練習をしてみました。4番ウッドを1インチほど短く持って、軽く7割ぐらいの力で何球か打ってみましたが、全て、まあまあ真直ぐに170ヤード以上打つことができました。その後さらに10球ほど打ちましたが、大きなミスショットが出ません。「これだ!」と思いました。私の場合、今までのミスの殆どは、飛ばそうと思った時の「力み」からきています。4番ウッドで200ヤード飛ばそうと思うと、どうしても力んでしまいます。しかし、「170ヤードでいいや」と思って打つと、全く力む事なく、良いリズムでスウィングできます。
話が長くなりましたが、今回私が掴んだことは「クラブを短く持って、飛ばそうとせずに軽く打つ」と言うだけの事なんですね。「なんだ、そんな当たり前のことか。読んで損した。」と思われている方もいらっしゃると思いますが、これを掴んでからドライバーも絶好調になってきました。どんな感じで好調なのか、次回はその辺についてお話しします。