ブログ

2024/07/06

スピン その2

 前回はスピンのメカニズミについてお話ししましたが、今回は、それでは一般アマチュアはスピンをどれだけ気に掛けるべきか?と言う話をしたいと思います。

 デシャンボーの逆転優勝で幕を閉じた全米オープンゴルフ(2024/6/13~16)が行われたパインハーストリゾート&CCクラブの様に、殆どのホールのグリーンが砲台でお椀をひっくり返したような形をしていてでガードバンカーに囲まれているコースだと、スピンコントロールが出来なければ話にならないと言うのが良く判ります。グリーンの形状に加え、コンプレッションも非常にハードに設定している為、ピンより手前に落ちた球がバックスピンで戻ってグリーンから出てしまうと言うシーンを何回も見ました。それを嫌って少し大きめに打つと今度は奥にこぼれてしまうと言う地獄の様なセッティングでした。この様なタフなセッティングの場合は、スピンコントロールが重要、いや必須になってきます。意図的にスピンを多くしたり、少なくしたりとスピンを自在にコントロール出来なければ、このようなセッティングのコースには到底太刀打ちできません。

 バックスピンが掛かりすぎるのを嫌って、スピン量を落とすのはプロであれば比較的簡単に出来る様です。例えば9番アイアンで通常150ydを打つ選手がスピンをあまり入れたくないときは8番アイアンで軽く、若干インサイトアウトの軌道で打てば良い訳です。これは前回お話ししたスピンの4要素、つまりヘッドスピード、ロフト、アタックアングル、ボールの硬さの内、ヘッドスピード、ロフト、アタックアングルの3要素がスピンが少なくなる方向へ変わるからです。

  一方、ピンハイに打っても奥にこぼれてしまうようなグリーンでは、しっかりスピンをかけて球を止める必要があります。球も垂直に真上からグリーンに落ちてくれば、スピンが無くても理論上は落ちた所に止まりますが、ランディングアングル(着地角)はPGAのツアープロでも50度代と言う事なので、基本的にグリーンに落ちたボールには前に転がる力が働いている訳です。グリーンに落ちたボールが慣性で前に行こうとするのを、なるべく前に行かせない様にするのがバックスピンの役割です。プロが20~30ヤード位のアプローチをウェッジで低く打ち出して、グリーンに落ちてから2~3回目のバウンドでトン・トン・キュっと止まるのは、強烈なバックスピンが掛かっているからです。アマチュアには憧れのアプローチですよね。

 それでは本題に戻って、アマチュアはスピンをどれだけ気にするべきか?アマチュアもディスタンス系のボールではなくスピン系のボールを使った方が良いのか?という点について考えて行こうと思います。ここで言うアマチュアとは70代で回る様な競技志向の上級アマチュアでなく、90が切れれば充分ハッピーと言った一般的なアマチュアゴルファーの事です。


最近ネットで見て驚いたのは、2023年のシニアの賞金王、宮本勝昌プロがディスタンス系のブリジストンの「ツアーB JGR」というボールをコースの状態によっては使用しているという記事です。かつての飛ばし屋もレギュラーツアーで戦うには若手との飛距離の差を少しでも埋め必要に駆られて選択だそうです。ディスタンス系のボールはヘッドスピートの速い早いプロがラフから打つとスピン系のボールよりはるかにフライヤーになりやすく、予想外のキャリーが出てしまう為、プロは怖くて使えないという事でしたが、昨今のディスタンス系のボールは割とスピンも入る、いわゆる「飛んで止まる」ボールに進化して、プロの使用にも耐える様になったんですね。

 フライヤーはドライバーのヘッドススピードが45/s以上なければ、少なくともミドルアインではならないそうです。ヘッドスピードが42/s位だと、ショートアインでは多少フライヤーすることもある様ですが、キャリーの違いはそれほどではない様です。因みにラフから打ってスピンが掛からずに転がってしまうのはフライヤーとは言いません。スピンがかからずキャーリーが出すぎてしまうのがフライヤーです。ヘッドスピードが速くないアマチュアがラフから打つと充分スピンが掛からない為、球がドロップしてしまい逆にキャリーがでません。ですからヘッドスピード42/s未満のアマチュアはフライヤーが怖くてスピン系のボールを選択する必要はない訳です。

 次に、グリーンを狙うショット(ミドルの2打目、ロングの3打目)でスピン系のボールを使った方が良いかどうかと言う点です。パインハーストを全米オープンのセッティングでプレーするのならば、我々アマチュアでも少しでもスピンが多く入るボールを選んだ方が良いのではないかと思いますが、通常日本で我々がプレーしているグリーンはディポットが出来る様な軟らかいグリーンが多いので、充分球が上がったフルショットでピンハイにキャリーしたボールが奥にこぼれてしまうと言うような事は滅多にありません。プロのトーナメントの様なタフなセッティングでない限り、スピン系のボールでなくともよいのではないかと思います。

 最後にアプローチです。スピン系のボールでないと、トン・トン・キュは難しいかもしれませんが、そもそもアマチュアにそんなアプローチは必要でしょうか?通常のアプローチでスピンが必要なシチュエーションというのはそれ程多くはありません。バンカー越えで奥行きのないグリーに乗せていくとか、手前のピンに寄せなければならない時はスピン系のボールの方が有利であることは間違いありませんが、今の「飛んで止まる」ディスタンス系のボールであれば、その様なシチュエーションでもある程度スピンも入ってそこそこピンの近くに寄せる事はできるのではないでしょうか?

 と言う事で、アマチュアでもスピン系のボールの方が有利な状況っていうのは有る事は有りますが、それを補って余りある程、ディスタンス系のボールを使うメリットの方が大きいと思います。ディスタンス系のボールのメリットは飛距離だけではなく、サイドスピンも入りにくいので曲がる幅もスピン系に比べると小さいというメリットも有ります。

例えば370ヤードのミドルホール、スピン系だと225ヤード先の右ラフのファーストカットに止まったボールが、ディスタンス系のボールだと230ヤード先のフェアウェイの右端に止まる訳です。セカンドの残り距離はスピン系145ヤードでディスタンス系は140ヤード、当然アイアンの飛距離も若干違ってくるので、持つクラブも1番手くらい違ってきます。と、理論上はアマチュアにとってディスタンス系のボールのメリットは大きいのです。理論上は、、、、